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生産の海外移管の問題
生産コストを削減するために生産活動を海外の低コスト国に移管するという製造業の長年の慣行は、最近になって劇的な転換期を迎えています。中国などの伝統的な低コスト国で人件費が急激に上昇している現在、海外で生産を行う製造業者の経済的優位性が著しく低下しているのです。
また、物流が複雑になり、輸送時間が長くかかり、顧客の要求の変化に迅速に反応するのが難しいという海外移管に伴う問題もあり、多くの製造業者が、生産コストの削減と生産性の向上を実現する新たな手段を模索しています。
解決策は既存ラインの自動化
この転換に役立つのが、費用対効果に優れた最先端のロボティクス技術を利用した自動化です。この方法であれば、どのような規模の企業でも、コスト競争力を低下させることなく国内での生産活動を維持できます。
Boston Consulting Groupのレポートによれば、「生産拠点のリショアリングを積極的に行っていると答えた企業の経営者の割合は、2014年から9%の増加、2012年からでは約250%の増加を示しています。ここから、過去3年でリショアリングを検討していた企業が現在それを実行に移していることが示唆されます」とあります。
デンマークのTrelleborg Sealing Solutions社に42台のURロボットが導入された結果、競争力が高まり、需要増に対応するために50人の従業員が新規採用されました。
この調査の回答者の56%は、自動化によるコスト削減が自社製品の競争力を高めたと考えており、71%は最先端の製造技術により現地生産の経済性が向上すると考えています。そしてほぼ4分の3(72%)が、今後5年間でさらなる自動化あるいは最先端製造技術に投資する予定だと答えています。
興味深いことに、この自動化の推進が雇用にマイナスの影響を及ぼすとは考えられていません。このレポートによると、50%の回答者が今後5年間で製造業の雇用創出が促されると予想し、そのうち74%が、生産拠点を国内(この場合は米国)の市場に回帰させる大きな要因の一つとして、熟練労働力が利用できる点を挙げています。
CNCマシンのテンダリング用に協働ロボットをプログラミングするRSS Manufacturing&Phylrich社のジェス・エスカレットCEO。
RSS Manufacturing and Phylrich社
カリフォルニアに拠点を置くRSS Manufacturing&Phylrich社はその代表例であり、ジェス・エスカレットCEOは「当社では生産拠点を国内に戻すことを大前提としています。当社が新しく導入したロボットはこの戦略にぴったりなのです」と述べています。
毎月バルブ700個の製造という新規注文に対応する必要に迫られ、同社はUR5を配備しました。Universal Robots社のUR5ロボットは費用対効果の高い自動化ソリューションであり、各種のCNCマシン、組立ライン、管曲げ機の間を容易に移動できます。エスカレット氏は次のように説明しています。「当社のCNCマシンで製造できるバルブ数は通常、2回のシフトで1カ月当たり400個なので、シフトを3回にしても、マシンをもう1台購入せざるをえないところでした。しかしUR5の使用により生産性予測が高まったので、その必要はなくなりました」。
こうして新しいロボットソリューションを導入した結果、製造の柔軟性が高まり、生産性が向上したため、初期費用がわずか数カ月で回収されました。また、このソリューションは最先端の安全機能を備えているため、安全柵を設置するための追加コストもかかりませんでした。
エスカレット氏は、最初にロボットが到着した時、従業員たちは新しいロボットアームを熱烈に歓迎したわけではなかった、とあっさり認めています。「彼らは、そのロボットが自分たちから仕事を奪うと考えていたのです。ですが現在、当社では従業員の研修を実施して、彼らがマシンの操作員からロボットのプログラマーや品質管理の検査員に転身することを奨励しています。新しいロボットは簡単に使用できることや、最終的にロボットを使ってどのような仕事をすることになるのかを理解すると、従業員たちは皆、安心してロボットを受け入れました。今では、ロボットプログラマーの第一号になれると期待感をもっているようです」。
加工サイクルを開始するRSS Manufacturing & Phylrich社のUR5ロボット