産業用ロボットと協働ロボットには、さまざまな違いがあります。ここでは主な違いを7つの項目に分けて解説します。
1. 柵・囲い設置の違い
産業用ロボットは、労働安全衛生規則第150条の4によって、作業員に危険がおよぶ場合には危険防止措置を講じることが義務付けられています。つまり、産業用ロボットを設置する場合には原則、人が立ち入らないように安全柵や囲いが必要です。
一方協働ロボットは、2013年の労働安全衛生規則の規制緩和によって、条件を満たしていれば安全柵や囲いを設置する必要がありません。
参照元:労働安全衛生規則第150条の4(運転中の危険の防止)
URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032
2. 設置場所の違い
産業用ロボットには安全柵や囲いが必要なため、設置には広いスペースが求められます。それゆえ、設置する場所が限られ、レイアウト変更もほぼできません。
一方、協働ロボットは安全柵や囲いが不要なため、狭いスペースでも使用可能です。また、協働ロボットは産業用ロボットに比べて小型かつ軽量なのでレイアウト変更がしやすく、設備の遊休化も防げます。
3. 製品サイズの違い
一般的な産業用ロボットは大型で重量があるので、重量に耐えられる床や可動域の広いアームに配慮した空間が必要です。しかし、その分パワーがあるので、たとえば自動車のような製品サイズが大きいものも扱えます。
対して協働ロボットは、人と同じ場所で作業することを前提にしているので、一般的な産業用ロボットに比べて小型で可搬重量もそれほどありません。そのため、製品サイズもそれなりの大きさに限られます。
4. プログラミング技術者要否の違い
産業用ロボットを動かすには複雑なプログラミングが必要であり、産業用ロボットを導入するときや導入後に動作変更する際には、豊富な知識を持つプログラミング技術者が欠かせません。
しかし、協働ロボットの場合、プログラミングが容易なので、専任の技術者がいなくても社内で対応が可能です。さらに近年では、プログラミングソフトウェアやPLCの向上により、既存のロボットやほかの機械とも統合ができます。
5. 運用維持方法の違い
ロボットは目的に応じた動きを教え込まなければ動いてくれません。ロボットに動きを教え込むことを「ティーチング」と言います。一般的に産業用ロボットのティーチングは難しく、専任の技術者が時間をかけて行います。
一方の協働ロボットは、ティーチングを容易に行える機能がメーカーによってすでに搭載されています。たとえば、ダイレクトティーチングが搭載されていれば、ロボットに直接触れて動かすことでロボットに動作を教え込めます。変更も簡単で専門的な知識やスキルがなくても運用維持ができます。
6. 向いている生産量の違い
産業用ロボットはハイパワーで動作スピードが速く、さまざまな作業を自動化できます。多くの場合、同一品種の大量生産に使われます。
対して協働ロボットは、産業用ロボットよりもパワーや動作スピードは劣りますが、プログラミングやティーチング、ラインへの組み込み後の再設置が容易なことから、多品種・小ロットの生産に向いています。
7. 運用コストの違い
産業用ロボットは協働ロボットに比べて本体価格が高いだけでなく、運用コストもかかります。ここではユニバーサルロボットの記事を参考に、産業用ロボットと協働ロボットの一般的なコスト項目を紹介します。
【産業用ロボット】