ロボットに囲まれて働くのはワクワクする時間です。それは当たり前のように見えるかもしれません。いずれにしても、画期的なロボットのニュースが日々の見出しを飾り、私達人間はとうとう次の列車に飛び乗る用意ができたかのようです。米公共ラジオ局のNPRやエジソンリサーチ社の新しいデータでは、2018年1月時点でアメリカ人の6人に1人はスマートスピーカーを持っており、1年前より128 %増加しているそうです。Amazonは大々的にロボットを利用して自社のサプライチェーンを加速させ、世界中の顧客に即日配達や当日配達を実現しています。ジャイアント・フード・ストアーズは、172ある全店舗にぎょろ目のロボットアシスタントを導入しようとしており、ウォルマートは床のモップ掛けから店舗のデータ収集まであらゆる業務を担うお掃除ロボット隊をリリースしようとしています。私達が乗る自動車は、(まだ)完全な自動運転ではないかもしれませんが、ロボット、自動化、AIによってかつてないほど安全で賢くなってきています。
ただ、私はこうした消費者向けロボットのおかげで毎日の出勤が楽しくなるわけではありません。元気をもらい次に何が起こるのかワクワクさせてくれるのは、広い視野、つまりUniversal Robots内での自分の立ち位置から目撃する目を見張るような物事です。ここからは、大小の企業がコボットを利用して、私達が日々お世話になっている製品を設計、製造、納入する方法を変えていく様子が見えるのです。
米国オハイオ州のComprehensive Logistics社で、Universal Robots UR10ビジョンカメラ付き協働ロボットがエンジン組立てを検査する様子。受託メーカーは自動車エンジンのサブアセンブリーで100 %品質を達成しました。UR10は組立てライン上に搭載されており、従業員のすぐそばで動作しています。
コボットは、従来の産業ロボットとは違ってパワーもスピードも制限されており、負傷事故を避けるための業界認定安全基準に沿って使用されています。複数のタスクをこなすプログラミングが簡単に行えるコボットは、作業者に代わるためではなく、人を支援するために設計されています。多くの場合、コボットはアーム形状をしており、作業者は両手をもう一組使えることになります。コボットは危険な仕事や反復作業によるケガのリスクを減らすことで作業者を守り、全体的な設備効率を向上させながら、作業者はかつてないほど簡単に手早く仕事を片付けることができます。
すべては10年前の2008年12月、Universal Robotsが世界初の協働ロボット「コボット」をデンマークの産業用テクニカルプラスチック/ラバーのサプライヤであるLinatex社に販売したことが始まりでした。当時のコボットはまだ黎明期にあり、一握りのロボット技術者や開発者のほかにはごく少数の人だけが、この小さく敏捷なロボットの本当のポテンシャルに感づいていました。Linatex社はそのポテンシャルを認め賭けに出て、ピカピカの新品のコボットを、作業者から離れたケージに入れる代わりに、工場フロアのど真ん中に据えたのです。作業者と一緒に働いたLinatex社のコボットは、すぐにロボットと人間の協働作業をまったく新しいレベルに引き上げました。コボットの時代がやってきたのです。
Linatex社は2008年12月、世界初の実用化コボットUR5を据え付け、大きな賭けに出ました。
10年後、コボットの市場は爆発的に拡大していました。2018年だけでコボット市場は60 %以上成長し、全世界の売上げが5億ドル近くに達したのです。産業用ロボットで最も急成長した分野としての協働ロボットは、その全世界の年間収益が2027年までに76億ドルに達すると予測されています。[1]
大企業にとっても中小企業にとってもこれは大きなニュースですが、労働市場に参入するロボットの波は、少なくとも雇用について言えば利益以上に害をもたらすのではないかと心配する労働者にとってイラ立つ存在です。熟練を要する仕事も単純作業も自動化や合理化をしてしまえば、ロボットやコボットは多くの労働者にとって「仕事を奪いに」くる機械労働力と同じようなものに映ります。
米国ボストンのTegra Medical社で、医療機器を製造する機械に3台のURコボットを配置したところ、スループットが倍増し、11人分の正規雇用が浮きました。同メーカーは顧客からの要求に応えつつ、コスト削減を続けることができました。Tegra社は現在、機械の世話から解放された作業者を別の工程に振り向け、企業成長を続けています。
興味深いことに、人材の需要は実際には供給を上回っています。団塊の世代が退職し、ジェネレーションX(1960年代から1970年代生まれ)、ジェネレーションY(1980年代から1990年代生まれ)、さらにはミレニアル世代(1980年代から2000年代生まれ)が製造業や倉庫業に興味を失っています。この分野の仕事に就く労働者が単純に不足しているのです。結果的に、これまでロボットを現実的な解決策とみなしたことのない企業も、突然助けを求めて右往左往する状態です。コボットはそうした要望にも手頃な価格で便利に応え、中小企業(SME)に扉を開きました。こうした企業は現在、1人、2人、10人の作業者チームを先端技術で補っているのです。
ロボットは本当に私達の仕事をなくすものなのでしょうか。答えは「はい」でもあり、「いいえ」でもあります。
世界経済フォーラムが「2018年未来の仕事レポート」で最近発表した見通しによると、企業が自動化へのシフトをさらに進めていけば仕事が減っていく(今後4年間で7500万人もの職がなくなる)のは確かですが、同じ期間に1億3300万人分もの新しい雇用が創出されるということです。
シフトしていくのは、人と機械の間の労働です。協働ロボットは、その労働部分のど真ん中にすっぽりと収まっています。この変化し続ける景色を見る上で、次の2つのシナリオを考えてみてください。
時は2016年
自動車メーカーの巨大な工場フロアを見下ろすと、大型の産業用ロボットがそれぞれ特定の仕事を受け持っています。ロボットは1台ずつ出入口の付いたケージに入っていて、飛躍的な生産増のために動いている危険な機械設備に作業者を安全離隔距離以内には近づけないようにしています。数時間ごとに、作業者は近くにあるロボットを停止させ、ケージを開け、制御装置の再校正やその他の是正措置や保守を実施し、ケージを閉めます。そして生産が再開します。おそらく調整内容は、別の部品や新しい塗装色への対応、あるいはまったく新しい製品シリーズへの変更などでしょう。それにも関わらず、作業者もロボットもいったん生産を止め、5分から1時間、あるいは数週間と変更対応への時間をかけています。
ドイツのHofmann Glastechnikさんは、社員の潜在能力を引き出し、生産工程を最適化しようとしました。彼の家族経営の会社は現在、2台のURコボットを使って繊細なガラス管を自動的に成形機に送り込んでいます。その結果、生産工程が安定し、ガラス部品の品質も大幅に改善され、従業員は単純作業から事実上解放されました。
2019年に向けて疾走
このシナリオでは全体像がまったく異なります。今度は、機器を操作する数名の作業者が働く小さな工場が見えてきました。各作業者の傍らには小さなロボットアームがあり、(自動化の技術者ではなく)その作業者が精密な反復工程を記録する“place and position”(置いて位置決め)法ですばやく操作し、簡単にプログラムしています。ロボットは小ロットの部品の生産だけを行なったり、他のロボットに同じ仕事を“練習”させるために転送するプログラムを作成したりします。そのロボットアームは、標準グリッパーで加工する部品を把持して生産設備に送り込みます。次に品質テストと測定を実施しますが、同時進行でテストや測定を確実に行うのに必要な力、繰返し性、精度を提供します。必要であれば、力フィードバックや衝突検出のような安全機能で常時安全を確保しながら、人間の“同僚”が関わります。作業者とコボットは、工程から別の工程に簡単に切り替え、1台のコボットで複数のタスクをこなすため、貴重な生産時間を無駄にしません。さらに、生産要求事項が厳しくなれば、追加コボットの購入、配送、実現、訓練を数日足らずでやってのけます。
B-Loony Ltd社は英国で食品用のフラグ、旗、バルーンなどの特注販促製品を扱う中小メーカーです。縫製や製品組立ての取扱いに6台のUR3コボットを配置することで、顧客の需要にきめ細かく対応しながら市場競争力を維持してシェアーを伸ばし、英国での生産の継続に成功しています。コボットへの投資により、この英国中小メーカーは現在、年間2百万メートルに迫る旗布を生産し、食品フラグの生産を年間25万本から1500万本まで増産しています。
今日のコボットの使われ方は、かつてGM社、Boeing社、Caterpillar社などの大手メーカーとそのグローバル組織のサプライヤしかロボットを使って低コストで効率よく製品を製造、納入しようとしていなかった時代とは雲泥の差です。もちろん、コボットの採用は、産業用ロボットを歴史の教科書に追いやったということではありません。それとは反対に、産業用ロボットは、パワーやスピードが限られたコボットでは達成できないある種の高速、高積載量環境でメリットを発揮します。産業用ロボットは一般的にコボットや人間の作業者よりはるかに素早く、力も強いです。自動化がすすんだロボット生産ラインで使用するのに理想的であり、人間にはどうしてもできない仕事をやってのけます。
現在のコボットは、作業者の周辺で発生する反復的な手動工程のうち、手先の器用さやクリティカルシンキング、また現場で決定を必要としない工程に最適です。また、人間工学的な負傷事故が起きたり作業者が危険な機器や工程に関わらざるを得なかったりする作業にもうってつけです。さらに、先端設計やCAD/CAMの研修を受けなくてもロボットのセットアップ、保守、操作が可能になりました。コボットには、簡単に実現できる既製のアクセサリーが付いています。プログラムが簡単で使い方もシンプルです。なかには、AIや機械学習を利用して時間をかけて性能や実用性が向上していくものもあります。そして、以前工場フロアを一変させていたコスト高の産業用ロボットとは異なり、コボットは、その手頃な価格ゆえに家族経営の町工場なども利用しやすい一方、大手メーカーからも高く評価される諸機能を提供します。
2019年、Universal Robotsで最も急成長するのは中小企業のお客様です。これは主に、コボットがシンプルかつ順応性が高く、小売価格が安く、投資回収が早い(多くのお客様は3~4ヶ月という短期間で資本を回収)ためです。これらの要因が、ブラジル、中国、インド、メキシコなどの国々で事業を伸ばすとともに、従来とは異なる製造環境で企業に解決策を提示できる当社の力の原動力となっています。唯一、当社の勢力範囲を広げる鍵は、コボットが私達の知るように産業を転換する様子をいかに早く伝え広めることができるかでしょう。
日々、コボットの需要増がロボット技術の成熟とうまくマッチし、コボットの盛隆をもたらす大きな嵐が巻き起こっています。コボットの売上げは2025年までに10倍に跳ね上がり、全部で産業用ロボットの総売上げの34 %になると予測されます[2]。その理由は明らかです。歴史上初めて、ほぼ誰もがどこでも、適応型コボットを使って作業者の技能、創造性、生産性を補完し、高めることができるのです。
私は仕事のなかで、クライアントが日々、新しい作業や新しい産業にコボットを適用してくれるのを見ています。クライアントがコボットで達成できる内容は実に多様です。なかでも、私達の仕事の価値が分かったときや、お客様の事業が一夜で実際に変わる様子を見せてもらったときにはぞくぞくします。Universal Robotsがこの10年で達成してきたことは印象的です。それはまさに「コボットの時代」であり、次の10年で達成されることを目の当たりにすることができることに喜びを感じます。
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[1] 米国ロボット工業会(RIA)による
[2] Interact Analysis社による「協働ロボット市場-2018年リポート」による