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「コボット」とも呼ばれる協働ロボットは、製造ラインの「完全手動」と「完全自動」の間をつなぐ新しいタイプのロボットです。コボットは中小医療機器メーカーに決定的な競争力をもたらしているほか、大規模OEMが以前なら費用効率が悪く自動化できなかった作業を自動化するのに役立っています。このブログではコボットのどこが従来の産業用ロボットと異なるかを解説し、協働ロボットを使った医療機器メーカー3社がどのように生産性や品質を向上させコストを削減したかを紹介します。
中小医療機器メーカーで働く人の多くがロボットと聞いて思い浮かべるのは、大きな工場でフェンスに囲われて動く巨大な産業用ロボット、あるいは人間のように振る舞う未来的なサイバーロボットかもしれません。しかし、この2つの間にこそ新しい現実が生まれているのです。新しいタイプのロボット、つまり協働ロボット(略称「コボット」)は、全手動で行う組み立て作業と完全自動化された製造ラインの中間に位置しています。この新技術により、大規模メーカーはこれまで自動化するには費用効率が悪すぎた作業を自動化できるようになったほか、小規模の専門メーカーでさえも自動化に手が届きその恩恵を受けられるようになりました。
これまでの相場では、ロボットの費用は作業員1人の2年分の給与と同等とされてきました。でも協働ロボットならその約4分の1の費用ですみます。従来のロボットのコストはシステム全体の費用のうち25〜30%を占めていたにすぎません。残りはロボットのプログラミングやセットアップ、遮蔽された専用の作業スペースにかかる費用です。でもコボットなら通常それも必要ありません。コボットの初期費用は手頃で多くの場合中小メーカーでも1年以内に投資回収が可能です。中にはもっと短期間で回収する企業もあります。
Dynamic Group社で活躍するURロボット。熱に極めて敏感な部品を含む医療機器の射出成形全サイクルのマシンテンディングを実行。まず射出成形機で成形するピースが置かれた「ブックフレーム」のピック&プレースを行い、ユニットをトリミング治具に移し、部品をオペレーターの前に置いてオペレーターがその後の工程を担当。コボットがボタンを押すとまた次のサイクルが始まる。
Dynamic Groupでは医療機器製造の生産性が4倍に向上
Dynamic Groupはミネソタ州にある非上場の受託製造企業で、医療および電子産業で使われる複雑な射出成形プラスチック部品の製造と組み立てを専門に手がけています。低い失業率と高い賃金という課題に直面したDynamic Groupは、競争力を高めるため自動化に着目しました。コボットは熱に極めて敏感な部品を含む医療機器の射出成形全サイクルのマシンテンディングで活躍しています。まず射出成形機で成形するピースが置かれた「ブックフレーム」のピック&プレースを行い、ユニットをトリミング治具に移し、部品をオペレーターの前に置いてオペレーターはその後の工程を担当します。そしてコボットがボタンを押すとまた次のサイクルが始まります。
CEOのジョー・マギルブレー氏は次のように語ります。「手作業では部品1つを間違いなく作るのも困難でした。それぞれのシフトで違うやり方でマシンサイクルのテンディングをしていればなおさらです。Universal RobotsのUR10のおかげでサイクルは非常に安定しました。1シフトで3人のオペレーターを使って行なっていた作業を、1日3シフト、1シフトあたりオペレーター1人でできるようになりました。つまり生産能力が実質約4倍になり、大量に発生していたスクラップもほぼゼロになりました」
Dynamic Groupはさらに2台のコボットを導入し、ゲート除去や人間による検品に繊細な部品を運ぶ作業や、滅菌ワイプや生理食塩水をクラムシェル容器にピック&プレースし、中身が入ったシェルをコンベアに押し出すといったキッティング作業に利用しています。この作業は以前なら従業員6〜7人を充てて行なっていました。「ペースが速く量も多い作業で、長く続けるのは困難でした。それが今では2人もいれば回せる仕事になりました」とマギルブレー氏は語ります。「初めての経験なのにいきなりこんなに成功するとは驚きです。予想もしていませんでした。投資回収は2ヶ月以下でできましたが、
Tegra Medicalでは、独自のミックスモデルセルにURコボットが搭載されている。ここではコボットは3つあるホッパーからブランクを取り、そのうち2つをグラインダー2台にフィードし、3つ目を旋盤にかける。旋盤では内部の切削工具が半月板修復装置の先端にはす縁をつけていく。
Tegra Medicalはプロセス変更バリデーションなしで、生産量を2倍に
マサチューセッツ州にある医療機器の受託製造企業Tegra Medical社は先端的な外科・介入治療で使われる部品の製造と組み立てを手がけています。増大する費用や顧客からの要望により収益が圧迫されていたTegraは、医療機器を製造する機械のマシンテンディングに協働ロボットを採用することにしました。その結果Tegra Medicalはスループット2倍を達成。フルタイムの従業員11名を手動の反復作業からより価値の高い仕事に充てられるようになりました。コボットは独自のミックスモデルセルに搭載されています。ここではコボットは3つあるホッパーからブランクを取り、そのうち2つをグラインダー2台にフィードし、3つ目を旋盤にかけます。旋盤では内部の切削工具が半月板修復装置の先端にはす縁をつけていきます。
エンジニアリング・ディレクターのハル・ブレンクホーン氏は次のように説明します。「医療産業に従事する私たちにとってはプロセス変更に関する規制が課題でした。お客様への通知やバリデーション作業なしでプロセスの変更はできません。でもオペレーターをロボットに入れ替えるだけなら、プロセスは実質変わりません。プロセス間の部品のハンドリングが変わっただけです。これは大変なメリットでした。おかげでお客様には低い価格で製品を提供でき、私たちは需要通りの生産量を維持できるし、認証取得やバリデーション作業を誰かに背負わせずにすむのですから」
ブレンクホーン氏は、コボット3台を入れたセルへの投資は大成功だったと言います。「投資回収期間はこのセルで平均3〜6ヶ月です。通常プロジェクトを始めるときは投資回収に大体1年半から2年を見込みます。だからこの新しい協働ロボットは導入して本当によかったと思っています」
Nichrominox社でコボットのプログラミングをしたのは同社スタッフのセドリック・ルフランク・リュミエール氏。「プログラミングの知識は皆無でしたが2日間のトレーニングでロボットの使い方がわかり、プログラミングもできるようになりました」
家族経営の歯科用機器メーカーNichrominoxは生産量を10%拡大
Nichrominoxはフランス、リヨンにある家族経営の企業です。これまで40年間、歯科用の滅菌装置を製造してきましたが、人件費の安い外国との競争激化に悩まされていました。そこで従来型の産業用ロボットで金属の曲げ加工を自動化しようと考えましたが、すぐに壁が立ちはだかりました。必要な人材が社内で確保できないしプロジェクト費用が高すぎるのです。
今、Nichrominoxは協働ロボット4台を3つの製造ラインに設置し、曲げ加工セル、CNC加工機のフィード、オペレーターの横での組み立てを自動で行なっています。あるコボットは、1つ目のプレス機で穴あけ作業を行い、部品をシャトルテーブル上で回転させて、次に2つ目のプレス機で曲げ加工を行います。もう1台のコボットはCNCマシニングセンタに完全に組み込まれ、時短や作業の質の向上に役立っているほか、結果として反復性過労障害のリスクも低減しています。3つ目のラインではオペレーター1名とコボット1台が隣り合って、全面的に協力しながら組み立てステーションを担当しています。安全装置を取り付ける必要はありません。オペレーターがコボットを起動するときはグリッパーに搭載された力覚センサーを介し圧力をかけるだけなので、管理も楽にできます。
コボットのプログラミングを担当したのは社内スタッフのセドリック・ルフランク・リュミエール氏です。「プログラミングの知識は皆無でしたが2日のトレーニングでロボットの使い方がわかり、プログラミングもできるようになりました。今では1〜2時間もあれば新しいタスクのプログラミングができるし、品質と精度の向上のため、プログラムは常に改良を続けています」。Nichrominoxはロボットに投資した資金を14ヶ月で回収し、さらにコボットを導入して製造ラインの変革を進めようとしています。
人との協働を想定し、コボットには軽い素材や丸みをおびたジョイント、バックドライブしやすいモーターが使われています。また先進的な力覚センシング技術により、障害物や人にぶつかったら自動停止するよう設計されています。
コボットが医療機器メーカーの自動化の課題を解決
協働ロボット、別名コボットは、製造ラインにおける全手動と全自動の間をつなぐ新しいタイプのロボットです。コボットは中小の専門医療機器メーカーに大きな競争力をもたらしています。主なメリットは、柔軟に配備できること、人間の作業員のそばで安全に使えること、プログラミングと実装が容易で、短期間のうちに投資回収ができることなどです。
さあ、あなたのチームでもコボットを取り入れてみませんか?
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