多関節アーム・ロボットの汎用性をフル活用し、またガード無しでも作業員の近くで安全に作業できる機能を加えた、反復作業から作業員を解放する新しいオプションです。
作成者:Joe Campbell、ユニバーサルロボットのアプリケーション開発部シニア・マネージャ
30年前には、どのような運動学的構成のフル・サーボ制御ロボットも、射出成形用アプリケーションに導入されることはあまりありませんでした。このときの最も一般的なアプローチは、3つの軸から成るポイント・ツー・ポイントのシンプルな直交座標型ロボットを導入し、機械に取り付けることでした。テーブルの中心線に十分達するZ(垂直)ストロークにより、これらの非常にシンプルなロボットでは部品を型から素早く抽出してトートまたはコンベヤに送りました。
20年前には、フル・サーボ制御ロボットが一般的になり、より精度が向上し、アーム先端ツールも制御できるようになりました。15年前には、6軸ロボットを適用する成形会社が増えました。
ユニバーサルロボットの協働ロボットが、ミネソタ州のDynamic Group社、日本のアルファコーポレーション社、および中国のXiamen Runner社で射出成形機を管理する様子をご覧ください。
この進化は今日まで続くいくつかの技術的かつ事業的な促進要因によってもたらされたものです。
成形後プロセス: お客様は成形会社が完全な部品やアセンブリを提供することを求めており、成形会社は喜んでその価値を高めるでしょう。ゲート除去、トリミング、研磨、装飾、アセンブリ、包装、および梱包は、今では自動化の候補に最適な、一般的なタスクになりました。
表面仕上げの向上:お客様は表面仕上げに非常に高い水準を設定しており、そのため部品は型から最終的な梱包または輸送コンテナまで慎重に取り扱う必要があります。
製品ライフ・サイクルの短縮:製品アップデートや新しい導入のペースは、製造プロセスにおいて常に変えていく必要があります。
高度なミックス・ロー容量:在庫を減らすための製品のカスタマイズ、少ロット・サイズ、およびオンデマンド生産により欠品が増えており、設定への要求がますます厳しくなっています。
チェコ共和国の2K Trend社では、UR10協働ロボットが射出成形で嵌め込む部品をピックアップします。
この10年、昨今ではかつてない頻度でプラスチック・プロセッサは協働ロボットと呼ばれる新たなレベルの自動化を取り入れ始めています。一般に多関節アーム技術に基づいたこれらの協働ロボットは、標準の6軸ロボットに一層の安全性、ユーザー・プログラム可能性、および可動性を付加します。協働ロボットの魅力を理解するには、そもそもなぜ多関節アーム・ロボットが人気なのか考察してみると良いでしょう。
射出成形においては、配置の柔軟性と6軸ロボットの全体的な作業スペースが成功の鍵となります。さらなる自由度により、マテリアル・ハンドリング、アセンブリ、およびその他のアプリケーションの全段階において選択肢やオプションが広がり、これらは真のプロセスの利点になります。
成形前/成形後プロセス実行の柔軟性:型に部品を嵌め込み、成形後プロセスで部品を移動する際は、複雑な動きと難しい角度や位置が求められます。
生産設備にかかる費用の削減:軸直交ロボットには、多くの場合、運動学的制限を補うための複雑な生産設備が必要です。6軸多関節ロボットの動きの範囲や柔軟性は、生産設備とグリッパにかかるコスト、ならびに複雑さを単純化します。
ミネソタ州ラムジーにある小さな射出成形会社のDynamic Group社では、ユニバーサルロボットのUR10協働ロボットにより射出成形プロセス全体を処理します。型に嵌め込まれる部品が「ブック・フレーム」に(左寄りに)ピック&プレースされます。その後、オーバーモールドされた部品からフレームが除去され、トリミング治具(左端)にフレームが配置されます。さらに、処理を行うためにフレームがオペレータの前に置かれます。最後に、協働ロボットにより次のサイクルを開始するボタンが押されます。
精密部品を読み込む柔軟性:精密部品の取得と挿入は、6軸ロボットの配置の柔軟性と反復性により可能になります。
複雑な部品の抽出の簡単化:複雑な部品をイジェクタなしで取り除くのは困難ですが、6軸ロボットでは部品を器用にやさしく引き出すことができます。
日本のアルファコーポレーション社では初め、工業用ロボットを射出成形機として導入することを検討していましたが、安全柵を建てるために十分なスペースがなかったため、この考えを放置していました。アルファ社では、射出成形機の鍵への成形されたプラスチック部品のピック&プレースに、URロボットを代わりに選択しました。
障害物を避ける柔軟性:タイバー、スライド、ホース、およびクランプは多くの場合、部品の動きに干渉します。6軸ロボットは、その最大の柔軟性で型の周りを避けることができます。
メンテナンス寿命:6軸ロボットは、少ないメンテナンスでアップタイムを増やすよう保証されています。射出成形で使用するほとんどの直交ロボットは駆動部が露出しているため、通常のメンテナンスを必要とします。
柔軟な取り付けオプション: レイアウト、リーチの長さ、およびサイクル時間を最適化するために、さまざまな向きでたくさんの6軸ロボットを取り付けることができます。通常は床上または裏面開口部の台座に取り付けられますが、壁や天井に取り付けることもできます。ほとんどの6軸ロボットの取り付け方向は決められており、これはロボットを構築する際に工場で設定されなければなりません。他のモデルの場合、向きは現場で素早く設定することができます。
ユニバーサルロボットのUR5は、Dynamic Group社の直交ロボットとともに使用されます。直交ロボットが成形した部品をスライドから落下させると、近接するセンサが警告を発してURロボットを有効化します。URロボットは部品をピックアップしてゲート除去固定具に配置し、次にオペレータの最終品質チェックのためにこれをテーブル上に置きます。
狭い頭上空間:直交ロボットには、垂直(Z)軸がロボットの中心線を超えて伸びているという大きな欠点があります。複雑かつ高価な伸縮するZ軸がない場合は、天井高さは少なくともZ軸の範囲と同じ高さでなければなりません。多くのプラントで、導管、ワイヤ・トレイ、水、蒸気、および防火配管が、これを不可能ではないまでも、困難にしています。天井が非常に低い施設でも、6軸ロボットの射出機械上への取り付けは可能です。
床スペースの有効活用:床スペースは、どこの工場でも常に高価です。成形会社がさらに多くの成形前および成形後のプロセスを提供するにつれ、機械周りの床スペースの需要はさらに高まっています。6軸ロボットの機械への取り付けにより、床スペースを2次操作のために開放しながら、6軸の柔軟性の利点を活用することができます。
機械への容易なアクセス: 型は変更する必要があり、またメンテナンス部もアクセスを必要としています。6軸ロボットを機械または頭上に取り付けるということは、必要な時に妨害するものなくアクセスできるということです。
日本のアルファコーポレーション社ではURロボットを取り付けることで生産性が劇的に改善され、自動車の鍵の成形プロセスでは生産量が20%増加しました。
協働ロボットの利点
協働ロボットの利用は、射出成形市場で爆発的に増加しています。これは、協働ロボットが前述の6軸の利点をすべてもたらすだけでなく、従来の自動化では得られなかった大きな利点を提供するからです。
床スペースの拡大:協働ロボットの名前は、作業員の近くで安全に作業できることに由来しています。適切に適用すると(リスク評価後)、協働ロボットはほとんどの場合、重くて高価、かつ場所をとる安全柵や従来の自動化に関連付けられたアクセス用ドアを必要としません。ロボットの協働性によって、床や台座に設置している場合でも、より多くの床スペースを開放し、安全ゲートを開くことなく協働ロボットの作業領域に迅速にアクセスでき、警報を無効化することなどが可能です(ただし、ロボット自体が人間の周りでも安全であるようにセンサや速度制限およびトルク制限などが設計されていても、アーム先端ツールや処理中の部品がなんらかの機械的または電気光学的なガードなしでは危険である場合がある点に注意してください)。
関係オペレータ:協働ロボットは、オペレータや他の協働ロボット、および機械の周辺で安全に作業できるように設計されています。熟練オペレータと協働ロボットの相互作用を最大化することで、ロボットのみまたはオペレータのみで作業するより生産性が上がる場合があります。
このDynamic Group社での例に示すように、協働ロボットは押して移動することができます。
可搬性:協働ロボットは軽量で、設定とプログラミングも簡単に行うことができます。多くの場合、製造ツールとして扱われ、さまざまな生産に関わったり、スケジュールの要求に合わせたりするために機械から機械に移動して利用されます。協働ロボットはキャスター付きの台座またはカートに正常に設置されており、短期の部分的な作業の場合は押されて運ばれます。その他の設置では、協働ロボットの機械間の移動に磁石付きの台座または高精度コレットの取り付けが使用されます。
容易なプログラミング:一部の協働ロボットでは、きわめて直感的なプログラミングを提供しています。これにより、設定、プログラミング、および射出成形機とその他の周辺機器のインターフェース接続を非常に簡単に行うことができます。リードスルー・ティーチング法を使用しても、特別なソフトウェア言語を習得することなく、少ない運営費で、小/中規模の作業でもロボットの自動化を正常に実装できます。
低コスト/迅速なROI:協働ロボットは自動化の実装方法を変えつつあります。プログラミングと設定の簡略化、グリッパから視覚システムに至るまで事前にエンジニアリングされた周辺機器、およびガードの低減または廃止が、従来のロボットにかかっていたコストの半分での自動化を可能にしました。協働ロボット・システムは決まって$75,000台でインストールされるため、通常6~9か月以内の非常に迅速なROIを実現しています。