私はロボットメーカーの社員です。市場成長に関して「こんな機会が飛躍的な成長をもたらす」といった最新予測が出されるといかに人気が殺到するか、あなたもきっと想像できるでしょう。要するに、私はそうやって生活しているのです。
協働ロボット(コボット)に関するニュースはどれも喜ばしいものに思えます。先週私が目にした報告では、複合年間成長率は最大で50%拡大、2023年までに市場規模が40億ドル超になると喧伝されていました。これを読めば興奮し浮き足立ってしまう人が出てくるのも無理もないと思えます。でも私は浮かれたりしません。私がこれまで破壊的技術の世界で働いてきて学んだことを1つ挙げるとすれば、それは「ハイプ(過度の興奮や誇張)には注意せよ」です。
スペインの企業RNB Cosmeticos社はライン最終段階のパレタイジング作業に使うため、UR10を6台梱包・包装工場に導入しました。この協働セルは汎用性も高く、1分6パッケージの生産サイクルで350種類以上のアイテムに応用できる柔軟なソリューションです。RNB Cosméticos社のジェネラル・インダストリアルマネージャーAURELIO TORNERO氏はこう言います。「ハイテクロボットを扱うための専門スタッフは採用しません。今いるスタッフの能力が伸びてきているため、彼らを専門家にしていこうと思っています」
協働ロボットが製造業に変革をもたらす可能性がないと言うわけでは決してありません。それについてはこれまでもかなり述べてきたし、さらに重要なことに、お客様が業務にロボットを導入し成功する例も見てきました。しかし協働ロボットがもたらす破壊的イノベーションは多くの場面でかなり抵抗も受けてきました。そして、ロボットが設置されきちんと仕事をこなしていてさえ、凝り固まった物の見方により拡大が阻まれています。
協働ロボットの場合、ハイプと、ガートナーの言う「幻滅のくぼ地」との間にある溝を埋める物は何なのでしょうか。メーカー各社は、今日自らが板挟みになっていることに気づいています。労働人口の高齢化により生産性は下がっている反面製造業は労働者に嫌われており、その一方では、分散型の意思決定に基づき機械が自律的に稼働し、製品が製造過程全体を通じ自動的に動いていくデジタルマニュファクチャリングの時代への移行も迫られています。メーカーは自動化をさらに進めることが、現状を打開しインダストリー4.0の扉を開く鍵になると知っています。
台湾の射出成形メーカーBTC Mold社はプラスチック射出成形の生産ラインに協働ロボットUR5を4台導入し、人件費35%以上カット達成と同時に深刻な人手不足も解消しました。BTC Moldは顧客が多品種少量生産を求めればそれに対応して生産ラインを即座に変化させ、高品質なカスタム製品を提供できるようになりました。またこれにより総合的な競争力も向上しました。
より多くの業務を自動化するためには、ロボットベンダーを2つの視点から検討する必要があります。「今すぐ何をしてくれるか、そして将来に備えるためどんな支援をしてくれるか」という視点です。以下の質問を踏まえながら、この2つを兼ね備えた間違いのないロボットソリューションを見つけましょう。
・協働ロボットのトレーニングをするのは誰か? すでに工場にいる人が簡単にトレーニングできる、プログラミングも高度なコンピューター技術もいらないロボットを選びましょう。どんな作業をする必要があるかロボットのアームを動かして教え、その作業を組み込まれたメモリに保存するだけで作動させましょう。
・協働ロボットはすぐに稼働できるか? 協働ロボットは新たな設備や手間をかけることなく簡単に既存の環境に導入できなければなりません。ロボットにトレーニングさせる作業をあらかじめ明確にしておけば、設置から生産までの時間は数ヶ月ではなく数日で済みます。
・協働ロボット1台でいくつの作業ができるか? ロボットが配線に繋がれ1つの決まった作業だけをするようにプログラムされていた従来の自動化技術と異なり、協働ロボットは様々な作業に使えるものでなくてはなりません。このような柔軟性を持たせるには、高度なセンサーと視覚システムが欠かせません。
・協働ロボットにはどんな作業ができるか? この問いは非常に重要です。特に、協働ロボットに用いられる技術は新しく、自動化エンジニアの大半にもその可能性は到底わからないからです。最初はヒューマンスケールの、人間のペースで行われる反復作業から始めるのがおすすめです。作業を見に行くことができ、現場でロボットができる作業を指摘してくれるパートナーを選びましょう。イノベーションでは約束を売るだけでは十分ではありません。
・イノベーションにはいくら費用がかかるか? 協働ロボットはソフトウェアを使ってたくさんのことができると同時にスマートフォン同様アップグレードは無料でなくてはなりません。そうすることでメーカーが先々まで使い続けることができ、継続的な自動化イノベーションが可能になります。
・その協働ロボットはどのぐらい賢いか? 製造業のデジタル化がますます現実のものとなる中、スマートな機械は不可欠になっていくでしょう。協働ロボットは担当する作業を自ら管理し、自らのパフォーマンスを監視できなくてはなりません。ロボットは自分が扱う機械を管理・監視して主要指標を報告できなくてはなりません。よく起きる問題があればそれを解決したり、更新情報を提供したりする必要もあります。
製造業がデジタル化に向けて進化する中、起こりつつある変化を見守るのはとてもワクワクするものです。このような変化を加速させる市場の一端を担うことにはさらに輪をかけてワクワクを感じています。
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