多くの人間の作業員と違い、産業ロボットは同じ作業を何日、何年と休みなく繰り返しても不満を感じることはありません。それだけでなくロボットは作業を毎回同じように実行します。だからメーカーは生産量を拡大し、品質を向上・安定させることができるのです。
投資利益率(ROI)が自社のビジネス要件を満たすか判断するためには、当然ながら産業ロボットアーム導入の費用とメリットを考慮しなくてはなりません。分析ではロボットの初期費用、設置費用、維持費を検討する必要があります。そこには、他の機器とのインテグレーション、プログラミング、周辺機器(グリッパー、センサー、ロボットアームコントローラなど)や安全対策の費用も含めます。
また、産業ロボットアームをあらゆる側面から十分に理解することも重要です。
いちばん一般的な製造用ロボットはどれか?
まずは、従来型産業ロボットと新型の協働ロボットとの違いを検討してみましょう。過去数十年間に普及していた産業ロボットは大きくかさばる産業用機械で、その大半は大手企業向けのものでした。従来型産業ロボットが得意とする用途は、量が多く比較的変化の少ない作業です。事実、産業ロボットと聞いて多くの人がイメージするのは自動車工場の組み立てロボットのようなものではないでしょうか。
油圧ロボットアームを搭載した従来型の組み立てロボット
テキスト別案:従来の組み立てロボットは油圧ロボットアームを搭載し、産業に使われています。
今日、協働ロボットはロボット産業でも最も急成長を遂げている分野で、その導入のチャンスは中小のメーカーにも広がっています。今や、中小メーカーでもコストパフォーマンスの高い自動化ツールを使い、少量多品種の製造でも競争できるようになりました。
小規模事業者でも家族経営企業でも、これまでなら費用効率の悪かった作業を低コストの産業ロボットアームで自動化できます。協働ロボットがあれば、敬遠されがちな仕事の担い手不足を解消できるうえ、生産性や競争力を上げることも可能です。
協働ロボットが工場での作業を救う
参考のため、下の表に産業用の協働ロボットアームと従来のロボットアームの違いをまとめました。
協働型と従来型の産業ロボットアームには、それぞれに適したニーズがあります
ユーザーが求めるもの |
従来型産業ロボット向き |
協働ロボット向き |
多量の製品を高速で製造したい |
〇 |
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人間の作業員と同程度のスループットが欲しい |
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〇 |
大きい可搬重量と長いリーチ(特に高速時)が欲しい |
〇 |
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社内でロボットのプログラミングと設置をしたい |
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〇 |
ロボットを別の作業に配備し直すのが簡単 |
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〇 |
高速時でも極めて高い精度が欲しい |
〇 |
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生産現場のレイアウト変更を最小限に抑えたい |
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〇 |
ロボットがする作業を完成させるため作業員がセルに入れるようにしたい |
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〇 |
他の機器やロボットとのインテグレーション用オプションが欲しい |
〇 |
〇 |
初期費用を抑え1年以内に投資回収したい |
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〇 |
少数の作業員または作業員なしで作動させたい |
〇 |
〇 |
長期間変わる予定のない作業・製品を自動化したい |
〇 |
〇 |
産業ロボットにはいくらかかるのか
従来型産業ロボットを工場に統合するとしたら、費用は何万ドル、あるいは何十万ドルもかかるでしょう。それに比べて協働ロボットなら導入の初期費用は工場作業員1人の1年分の人件費程度で十分収まります。
ロボットの費用を検討する際に大切なのは、自社で使う産業ロボットの用途をあらゆる面で、見えない部分まで掘り下げて検討することです。目に見えているものは氷山の一角にすぎません。
産業ロボットアームの初期費用は氷山のほんの一角にすぎません
大半のメーカーにとって一番重要な問い、それは「投資回収にどれくらいかかるか」です。
ロボットアームの費用の評価方法の一例と、費用対効果分析にかかるその他の要素を見てみましょう。ロボットアームを購入する際の判断材料になります。
産業ロボットのROI計算方法の例
ロボットの損益分岐点と純利益の計算方法
産業ロボットのさまざまな用途別にみた、平均的な投資回収期間