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ロボット工学の歴史は常に自動車産業と密接な関係がありました。実際、産業用ロボットを導入した最初の企業は、1962年に導入したゼネラルモーターズです。そして1970年代以降、生産ラインに大規模なロボットシステムを導入することが自動車産業の特徴となっており、それは現在まで続いています。今日、自動車業界には多くの変化が起こっています。カスタマイズされた自動車を求めるニーズが高まっており、生産のバッチサイズはどんどん小さくなっています。こうした状況は、自動車メーカーやすべての自動車部品サプライヤーにとって、新たなニーズの変化に対応するために常に生産レイアウトの変更に備える必要があることを意味します。したがって、この業界では精度と効率性に次いで柔軟性も重要な要素となっています。しかし、従来の産業用ロボットでは柔軟性は求められていないので、柵内にボルトで固定されて単一の作業のみに使用されるものでした。そのため現在では多くのメーカーが生産に協働ロボットを利用しています。
工場の将来構想:モジュール式、移動可能、柔軟性
そのような企業のひとつがAudiです。ドイツのインゴルシュタットにある本社で開催された「Tech Day Smart Factory」というイベントで、Audiは従来の組立ラインをはるかに超える新しい生産コンセプトを発表しました。この新しいコンセプトは、新製品の多種多様化に対応し、製造ラインに新しい工程を常に統合できるように、モジュール式の移動可能な組立方法を採用しています。無人搬送車(AGV)だけでなくUniversal Robotsの可搬型軽量ロボットも、同社の工場の将来構想において重要な役割を担っています。
版権:Audi
人間工学の観点から望ましくない作業は協働ロボットが代行
メーカーにとって柔軟性のニーズは確実に重要度を増していますが、大手自動車メーカーが協働ロボットを選ぶ理由はそれだけではありません。過重労働や人体に有害な作業から作業員を解放できることも重要な要素です。インドに拠点を置くBajaj Auto Ltd.(世界第3位のオートバイメーカー)は、時代の風向きにいち早く気づきました。2010年に同社は、生産プロセスの標準化をさらに進めるだけでなく、大部分の仕事がいまだに手作業で行われているために生じる難問を解決することを目指していました。「二輪車組立ラインは多大な労働力を要し、作業スペースが狭い中、身体に負担がかかる動作を高度な正確さでこなさなければなりません」とBajaj社の技術本部長(ロボット・自動化担当)のVikas Sawhney氏は述べています。これらが主な理由となって100台を超える協働ロボットを生産ラインに組み入れることが決定されたのです。従業員たちも満足しており、「協働ロットを使って高品質の製品が製造できるので、私は自分の実績をとても誇らしく思っています。この最先端のテクノロジーの操作はとても面白くて簡単ですし、身体に負担がかかる作業はロボットが代行してくれます。私も他の女性従業員も協働ロボットたちと一緒に働くのを楽しんでいます」とBajaj Auto Ltd.の組立ライン作業員のRameshwariさんは述べています。
日産自動車も同様のケースと見なすことができます。同社では従業員が高齢化し、それに伴ってきわめて重要なスキルが失われるという問題に対処しなければなりませんでした。また、同社の横浜工場にあった問題のひとつにサイクルタイムの超過がありましたが、その結果として一時的に救援要員を配置する必要に迫られ、それが日産の人件費・労務費が高騰する要因になりました。その対策として2つのラインにUR10ロボットアームを設置した結果、サイクルタイム超過の問題は過去のものとなり、現在では作業員が行わなければならない重労働が大幅に減少しています。
メーカーだけでなくサプライヤーもコボットを利用しています。ほんの一例ですが、世界最大のOEM部品サプライヤーのひとつ、Continental Automotive社は、6台のコボットを設置して自動車計器パネルの製造におけるPCBボードの処理を自動化し、さらに3つのUR10プロジェクトを推進しています。
この業界で製造ラインに協働ロボットを導入した例は大手の多国籍企業だけではありません。中小企業も製造ラインにコボットを取り入れています。例えば、SHAD社の組立ラインやLinaset社のブロー成形における利用がその実例です。他にも多くの導入例があります。