株式会社豊田自動織機
協働ロボットと既存技術の組み合わせで高可搬と安全性を両立
01 概要
愛知県半田市でトヨタ車ハイラックス、ランドクルーザーなどに使用されるGDエンジンやF33Aエンジンを製造する豊田自動織機東知多工場(703工場)では、将来の人材確保に向けて人が集まりやすいような工場に改善していく取り組みを行っています。この取り組みの一つとして粗材の投入工程に着目し、協働ロボットとバランサーという既製品を組合せて重量物搬送を自動化する技術開発を行いました。結果、0.3人工の作業工数低減に成功、隣接するラインと渡りで仕事をする大部屋化も検討できるようになりました。
02 課題
従来、吊具とホイストを活用し手作業で粗材を投入していましたが、粗材重量は26kgであり落下リスクなど危険が伴う課題がありました。また、作業者は粗材を投入をするために120m離れている場所から不定時で呼び出されることから、煩わしい作業でもありました。
Video — 豊田自動織機
03 ソリューション
投入工程の自動化にあたり、考えたのが既製品を組み合わせる技術開発です。具体的には、協働ロボットをバランサーで補助するという手法にチャレンジしました。目標サイクルタイム等の要件を満たすためにいくつかの組み合わせを検討した結果、今回は剛体アーム型機構を持つトーヨーコーケン製のウルトラバラマンとURロボットを組み合わせることで目標を達成しました。また、バランサーと組み合わせたシステムの為、実際ロボットアームが操作する治具と粗材の質量は約40㎏であるのに対し、ロボットの荷重設定は0.1kgとして駆動させているため、サーボ発振が発生する問題に直面しましたが、URロボットでは荷重、重心、慣性を任意に設定することができ、加えて速度や加速度などの設定を最適化することで問題を解決しました。
これでも当初はURロボットに負荷のかかる機構になっていたことから、重心中心揺動機構と呼ばれる治具を開発(2023年特許取得)し、ロボットにかかる負荷をさらに軽減する対策も施しました。
粗材はばら積みの状態となっているため、取り出しはランダムピッキングを行う必要がありました。今回の取り組みでは、YOODS社のYCAMというビジョンカメラを採用、取り扱いに長けているCA技研社と協力しながらシステム構築を行いました。
URロボットのメリットに関して、豊田自動織機 エンジン事業部 生産技術部 開発室 開発1G ワーキングリーダーの石原 聡氏は語ります。「バランサーを使って荷物を地切り・荷下ろしを行うと、推力変動が生じ、通常の位置制御モードだと保護停止が発生するリスクがありますが、URロボットに標準搭載された力覚センサを用いることで実現できるフォースモードを使うことによって、指定された方向に推力を発生させることに専念させることが出来るので、スムーズな地切り・荷下ろしを実現することが出来ました」
地切り・荷下ろし以外にもフォースモードは活用されています。「粗材のピックアップ時にもフォースモードを活用することで、ならい動作を行いながらロボットの治具を粗材へ挿入しています。フォースモードは至る所で活用しています」
リスクアセスメントに関しては、安全柵とセーフティレーザスキャナ併用することでリスク低減策を講じています。粗材の質量という危険源に対し、吊り荷の下に手を出させないために、柵を設置。粗材の供給をスムーズに行うために柵がないエリアを設け、ここでは850㎜以上近づくことが出来ないように足元にセーフティレーザスキャナを配置し、エリア内に入った場合はセーフガードストップ(予防停止)するように対策しています。
「導入効果に関しては0.3人工の作業工数低減に成功し、様々な組み合わせが検討でき、隣のラインと渡りで仕事をするようなことも検討することが出来ました。」(豊田自動織機 エンジン事業部 製造第二部 加工課 課長 山田 英貴氏)
山田氏は続けます。「いつも自動機を導入する際は、安全柵など設備がだんだん大きくなってしまいますが、そうなることなくコンパクトなままで設置でき、かつ安全は担保されているので、すごく可愛がっています」
豊田自動織機では今回の自動化工程の横展開に加え、エンジンの上げ下ろしや、コンベア中心になっている工程の自動化を検討中です。今回の協働ロボット導入を経て豊田自動織機 エンジン事業部 生産技術部 開発室 開発第1G グループ長 清水 達也氏は語ります。「答えを決めてしまうと、その答えを探すのに時間がかかってしまいます。まず協働ロボットを一回導入し、使いながら勉強し、入れる範囲をどんどん拡大していくと自動化が進むのではないかと思います」
採用ロボット:
UR10e x1
- 危険が伴う工程の改善
- 小型協働ロボットとバランサーの組み合わせで重量物搬送の自動化を実現
- フォースモードを活用することで安全性を犠牲にすることなく停止が起きづらいロバストな設備を構築
- 安全柵が不要でコンパクトな設備導入
- 重量のある粗材の投入
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