T&W Stamping
スポット溶接を自動化し、作業効率を40%向上
01 概要
米国オハイオ州のT&W Stamping社は、金属加工の中で最も人手への依存度が高い工程の1つであるスポット溶接機での溶接作業を自動化したいと考えていました。スポット溶接機は強力な磁界を発生させるため、ロボットのサーボモータを空回りさせてしまい自動化が困難でした。同社はこの問題を UR5 で解決し、ロボット導入後4 ヶ月で生産効率を 40%向上させるとともに、従来はオペレータ3 人がかりだった仕事が1人で担当できるようになりました。
02 ロボット導入前の課題
「スポット溶接に協働ロボットを使うだって?知る限り、そんなことをした人は見たことがありませんでした」と、ユニバーサルロボット(UR)の認定システムインテグレータ Crum Manufacturing社の自動化担当ディレクタ、Juan Rodriguez氏は語ります。
Rodriguez氏は、オハイオ州ヤングスタウンにあるT&W Stamping向けの仕事をしていました。同社は大型トラックの受託製造会社で、信頼できる自動化ソリューションを模索していました。T&W Stamping の上級副社長兼ゼネラルマネージャである Craig Sivak 氏は語ります。「ちょうどパワートレイン・ブラケットを製造する契約を大口顧客から受けたばかりでした。年間4万台という数量自体は大きくはありませんが、1部品あたり8つの溶接ナットがあるので、手作業で行わなければならない溶接個所が32万個もあるのです」Sivak氏と彼のチームは、協働ロボットがこのタスクを実行できるか調査することにしました。「既存レイアウトを変更しなくてよいとわかりました。ロボット内部に安全機能が組み込まれているため、追加の安全柵が必要ないためです」
大型の産業用ロボットがスポット溶接を行うのは一般的ですが、小型の協働ロボットがこれまで扱ってこなかった理由をRodriguez氏は次のように説明します。「スポット溶接機は加工時に強力な磁界を発生させ、一定範囲内のあらゆる電子機器に影響を与えます。従来型のロボットの場合は、大きなC型クランプのアーム先端工具を使用しても、ロボットが磁界の発生場所から距離があるため、問題にはなりません。しかし、人が作業していた既存の溶接セルにはめ込もうとする小型協働ロボットの場合は、全く別の話です」
Video — Collaborative robots in welding application T&W Stamping - USA
03 ソリューション
Crum Manufacturingはロボットを接地し、特注のアーム先端工具に非金属材料を追加して、溶接機からロボットを遠ざけることでこの障害を克服しました。この厄介な作業に協働ロボットを使えるようになったこと以外にも嬉しい発見がありました。「URからの見積もりを見て驚きました。大型の産業用ロボットの中には(米国ドルで)6桁のものもあり、もっと大きな数字を予想していたのです」(Sivak氏)
T&W Stampingは、溶接機にパーツをセットするための8つの冶具にかかるはずの費用よりも30%安く、溶接セル全体を構築することができたのです。また3人のオペレータをより付加価値の高い作業に配置転換することができました。ROIの計算を行ったSivak氏は続けます。「他の設備機器にはないコスト削減効果、さらにオペレータの数を減らすことで節約できる人件費と利益を考慮すると、投資回収は4カ月未満でした」
04 ビジョンカメラがワークのピック位置をガイド
「URロボットは、パーツを基準点から正確にピックアップします。これはとても重要で、というのもワーク自体の固定治具となるからです。URロボットはワークをピックすると、すべての穴の位置を正確に把握します」(Sivak氏)
コンベア上に設置されたCognex社のビジョンカメラが、ワークのピックをガイドします。UR5 はこのガイダンスに従って部品を 2 台のスポット溶接機のうち 1 台に入れ、振動ナットフィーダで溶接ナットをワークに取り付けはじめの 4 か所の溶接を行います。これが終わると、UR5はブラケットを回転させて2台目の溶接機に移動させ、残りの4つの溶接を行います。52秒のサイクルタイムの後、UR5がワークを出荷コンベアの上にあるCognexのカメラの下に移動させ、8個の溶接ナットがすべて付いているか、正しい位置にあるか、ねじ山があるかどうかをチェックします。
ダウンタイムなしに一貫して生産
T&W Stampingは、週5日8時間シフト制で操業しており、UR5 は通常 60% の稼働率で2 年以上稼動しています。「UR ロボット導入の利点は、一貫性があることです。このロボットで生産上の問題やダウンタイムが発生したことは一度もありません。もしロボットがなかったら、4人のオペレータが溶接セルで8つの治具を管理して、ワークに溶接ナットを付けていたでしょう。今では、このセルを管理するのに必要なオペレータはたった1人です。彼はロボット操作の経験はありませんでしたが、3日間のトレーニングコースでUR5の操作とプログラミングを学び、今では製品検査とロボット操作を担当しています。
T&W Stampingにおける溶接ロボットセル開発は、Rodriguez氏にとってホームランと呼ぶにふさわしい成果です。「30年以上前のスポット溶接機を最新の協働ロボットとつなげられるのは、我々にとっても会社にとっても大きな収穫です。URロボットと溶接機の組み合わせは、今後ますます増えていくことでしょう」
T&W Stampingは、協働ロボットが実行できる新しいタスクに目を向け始めています。「私たちは、スポット溶接された部品を搭載したオイルパンを製造しています。部品のサイズや形状から、スポット溶接を自動化するのは非常に困難です」とSivak氏は言い、MIG溶接に注目しています。「URロボットを使って部品を固定し、その上にトーチを載せてMIG溶接をするつもりです。これは、ロボットが実際に溶接を行うことになるので、現在とは異なる新しいプロセスになります」
- 既存のスポット溶接機とロボットの接続
- 既存のフロアレイアウトの変更不要
- 100%の製品品質を実現
- ダウンタイムや作業の中断がないためメンテナンスが不要、エンジン製造時の検査の変更に対応できる将来性のあるアプリケーション
- 4か月という短期間で投資回収可能
- 簡単なプログラミング
- 協働的で安全
- 高い一貫性、製品品質
- スポット溶接機へのワークの脱着
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